やってはいけないこと
腰部脊柱管狭窄症の症状が強い場合、基本的には、腰を強く反らす、背屈する方向の運動はあまりしない方が良いでしょう。
脊柱管が狭くなる方向に作用するので、より強く神経を圧迫し、症状が悪化する危険性があります。
急激な痛みやしびれが起こった場合は、まずは症状を悪化させないため、あまり動かず安静にするのも一つの方法です。
しかし安静期間が続くと、足の筋力や柔軟性、全身の体力が低下するので、望ましいとは言えません。激しい痛みや痺れがある程度落ち着いたら、安静にせず適度な運動を行ってください。
基本的には腰に負担のかかる動作は避けるべきですが、特に腰を大きくそらしたり、さらにひねるような動作はより神経を圧迫するストレスがかかるため注意が必要です。
時々、ゴルフをされている患者さんがいらっしゃいますが、病変のことを考えると、避けた方が良いと思われます。「歩けなくても、カートに乗ったらラウンドできる」とおっしゃるのですが・・・
しても良い運動、リハビリ
歩くことは下肢筋力や腰椎支持力を維持するために重要です。翌日痛みが増強しない程度に毎日歩くのが望ましいですが、症状の強さによっては長時間続けるのは難しいでしょう。
神経への圧迫をある程度減らすため、前傾姿勢をとる、杖やシルバーカーを利用するなどの方法があります。ただし、あまり前傾姿勢を強くし過ぎると、長期的にみると腰椎の前方(椎体や椎間板)に対して負荷がかかり、変性が進行する危険性があります。また、腰背部の筋肉の緊張も誘発して腰痛の原因ともなり得ます。適度な前傾姿勢というのは難しいですが、こまめに休息をとりながら歩くなど、腰に負担をかけすぎないよう工夫するのが良いでしょう。
自転車であれば、腰に負担がかからず、神経への圧迫も軽くなった状態で運動できます。エアロバイクなどを利用できる環境であれば、運動の方法としてはお勧めできます。
椎間板ヘルニアと違って、脊柱管狭窄症は病変が自然に消褪することは期待できないので、症状を悪化させないことに注意しながら、出来る運動を続けていくことが大事です。
それでも症状が悪くなった場合は?
腰部脊柱管狭窄症と診断された方の多くは、立ったり歩いたりすると腰から足が痛んだり痺れたりする、などおそらく何らかの症状があって、内服治療を受けている状況と思われます。
薬を飲みつつ、姿勢等に注意しながら生活していても、痛みや痺れがきつくなる方は、ある一定の割合でいらっしゃいます。
痛みや痺れにより生活に支障が出てきた場合、または足の力が入りにくくなった場合、排尿や排便に支障が出てきた場合などでは、外科手術を御相談します。
特に、足の痺れや痛みだけでなく、陰部にしびれが出てきたり、尿意や便意があっても失禁してしまうという症状が見られた場合、これは神経への圧迫が相当強いというサインです。急いで専門医を受診して下さい。
手術とは、物理的に神経への圧迫を取り除くという治療です。
様々な方法がありますが、大きく除圧術(神経の周りの骨を一部削る)と、固定術(骨を削るだけでなく、ボルトなどで骨同士を固定する)という2通りの方法に分かれます。
手術が必要になった場合、私は殆どの方に対して、内視鏡を用いた除圧術、つまり内視鏡下椎弓切除術をお勧めしています。
腰部脊柱管狭窄症に対する内視鏡手術
全身麻酔の手術ですが、手術は1か所につき1時間-1時間20分程度で終わります。
キズは8mm程度のものが2ヵ所で、筋肉を殆ど切らないため、以前の手術方法と比べるとキズの痛みは格段に軽くなっています。
入院期間についても、最近は翌日退院されるケースが8割以上です。
(今まで手術を受けられた患者様は、豊中市や池田市、川西市のほか、大阪市、または愛知や静岡など他府県からも来られていました。
遠方の方は、1泊入院を希望される場合が多いです。)
脊椎内視鏡手術について興味がおありの方は、腰部脊柱管狭窄症の日帰り手術 内視鏡下椎弓形成術もご覧ください。
手術動画も載せています。
最後に
腰部脊柱管狭窄症では、症状が急に悪くなる、病状が急激に悪化する、等の状況はあまり見られません。その一方で、神経が強く圧迫された状態が長期間続くと、外科治療を受けても改善が思わしくない場合があります。
自分の現在の症状については、信頼のできる主治医の先生に詳しく説明し、何か変化があればそのたびにお話ししておくのが良いでしょう。