頚椎症性脊髄症・神経根症で、してはいけないこと、注意すること

注意すること

注意するべきなのは、頚椎に負担がかからない、正しい姿勢を保つことです。

頚椎に負担がかかると、椎間板や椎間関節などに負荷がかかり、長期的にみると頚椎が変形する方向に力が加わります。前屈(うなずく動作)では椎間板および椎体に、後屈(上を向く動作)では背中側の椎間関節などに負荷がかかります。

さらに、後屈の際には、圧迫されている状態の脊髄および神経根が、さらに圧迫される可能性もあります。

日常生活を送っていく上で、全く首を動かさないということは出来ませんので、可能な範囲で、首に負担をかけにくい姿勢を心がけることが大事です。

首に負担をかけにくい姿勢を考える際には、首だけではなく、背中や腰、つまり脊椎全体にわたって負荷がかかりにくいように気をつける必要があります。ヒトが活動するうえで、脊椎は全体で、つまり首から腰にわたって連動してバランスをとっているからです

多くの場合、首に負荷がかかると背中や腰にも影響し、負荷がかかります。逆のパターンもあります。

首にも背中にも、負担がかかりにくい姿勢
首が前かがみになって頭部の重心が前方へ移動しているが、背中が丸まってバランスをとっている。

正しい姿勢は、

立った姿勢では、耳、肩、大腿骨の頭(大転子)、膝関節の前方、くるぶしのやや前方、が一直線に並んだがです。

座った姿勢では、頚部および体幹が地面と垂直になり、股関節と膝関節がほぼ垂直に曲がり、足底が地面に付いている状態が、正しい姿勢です。

耳、肩、体幹の中央、股関節が直線上(に近い位置)にあります。

仕事の際、特にデスクワークの方では、机や椅子の高さ、パソコンモニター画面の高さと角度を調節しましょう。

 できるだけ目線とディスプレイの高さを合わせる

 机に手を乗せたときに、肘関節、股関節、膝関節がほぼ垂直に曲がり、足底が地面につくように、 椅子の高さを調節する。

などに注意しましょう。

してはいけないことは?

首を屈曲(下を向くこと)、または伸展(上を向くこと)した姿勢を長時間続けないようにしましょう。

日常生活では、勉強、読書、スマホ、編み物、パソコン操作、テレビを見る、などの際に注意しましょう。

たとえば、首を前屈してスマホを見続けている方は多いです。

寝転んでテレビを見たり、うつ伏せの状態で読書をするのも、好ましくありません。

同じ作業であれば姿勢を変えずに続ける方も多いですが、前屈または後屈した姿勢での作業が続くと、必然的に首の負担へとつながります。

特に頚椎症と診断された方は、可能な範囲で、デスクワークなどの作業中に休憩を入れて、姿勢を変えることが望ましいでしょう。

おすすめする運動は?

頚椎を良い姿勢へと改善するためには、あごを引くように意識すると良いでしょう。

具体的には、下のような運動をお勧めします。

①顔は正面を向いたままで、下あごに手をあてる。
②あごを後ろ側へ軽く押す。1回につき、20秒ほど続ける。

ただし、頚椎症神経根症などで痛みが強い間は、首の運動は避けた方が良いでしょう頸部は安静とし、特に前屈、後屈の動きを控えるように注意して下さい

頚椎用のカラーを装着して頂く場合もあります。

それでも症状が悪くなった場合は?

頚椎症性神経根症の患者さんの場合

頚椎症性神経根症と診断を受けられた方の多くは、内服治療を受けておられるでしょう。

神経障害性疼痛(神経が原因での痛み)に対する薬、または神経への血流を改善する薬、等です。

神経根症状は、8割以上の方が飲み薬などの治療で良くなるのですが、一方で、全体の数パーセントの方で症状が進行することも事実です。

肩から腕、手指などに電気が走るような痛みを感じることが特徴です。

特に、痛みがかなり強い場合は、薬で良くなる可能性があっても、この状態で何週間も我慢するのは辛いかもしれません。

神経根症状による痛みや痺れにより生活に支障が出てきた方、または手の力が入りにくくなった方は、外科手術を考えた方が良いかもしれません

頚椎症性神経根症に対する手術は、大きく分けて二通りあります。

前方から椎間板ごと摘出して骨棘を削った後、そのスペースにケージ(金属のインプラント)を埋め込む方法(頚椎前方固定術)、

または、後ろから骨を一部削って、圧迫を受けている神経の周りにスキマを作る方法(頚椎椎間孔開放術) です。

多くの場合、私は、内視鏡を使用して頚椎椎間孔開放術を行っています。

内視鏡下頚椎椎間孔開放術について

全身麻酔の手術で、1か所の手術は1時間程度で終わります。

入院期間も短期でも十分で、翌日退院される方が8割以上です。

患者さんの首を後ろから見た図。

キズは2ヵ所で、大きさは各々 6mm、8mmです

片方のキズから内視鏡、もう片方のキズから器具を挿入して手術を行います

この方法のメリットとしては、

体への負担が小さい

手術後に首の安静を保つためのカラーを付ける必要がない

早期に社会復帰・職場復帰ができる、 等が挙げられます。

ただし、デメリットとして、

内視鏡での頚椎手術は全国的には広まっていない、という面があります。

内視鏡手術を御希望なら、自分で病院を探す必要があるかもしれません。

頚椎症性脊髄症の方

同じ頚椎症による症状でも、神経根症は改善する場合がありますが、脊髄症は経過中で徐々に進行する場合が多く、自然軽快は期待しにくい疾患です

手足の運動麻痺が徐々に進行する場合などは、手術が必要になります

脊髄の圧迫されている状態により、頚椎椎弓形成術頚椎前方固定術いずれかを選択することになります。

患者さんの首を後ろから見た図。キズの大きさは3.5cm
水平の断面図。脊髄が圧迫されている
スペーサーで椎弓を開いて圧迫を解除

多くの場合で、椎弓形成術を選びます。手術時間は2時間、手術のキズは3.5cm、入院期間は手術後1週間です。

最後に

頚椎症性神経根症は、8割強の患者さんの症状は短期間で改善しますが、薬を内服しても良くならない場合や、症状が急激に悪くなる場合もあります。

頚椎症性脊髄症は、症状は急激にではありませんが、徐々に進行する場合が多く、改善は期待しにくいです。

自分の現在の症状については、信頼のできる主治医の先生に詳しく説明し、何か変化があればそのたびにお話ししておくのが良いでしょう。

頚椎症
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