③ 手や足の痺れがありますが、病院の何科を受診すればよいでしょうか?
①手がしびれるのですが、原因は?
手に分布する神経は、脳から脊髄(頚髄)を通って、腕から手の末梢神経へ分布します。
しびれを感じるということは、神経の経路(脳、脊髄、末梢神経)に対する物理的な圧迫、内部の障害、または内科的疾患などが考えられます。
1.脳が原因の場合
多いのは、脳出血や脳梗塞などのいわゆる脳血管障害です。
障害を受けた脳と反対側の手足に痛みや痺れが見られます。
特に視床という部位が障害されると、痺れだけでなく、強い痛みも伴うことがあります。
脳の疾患が原因であれば、ほとんどの場合、痺れや痛みは姿勢などに関係なく常に見られるのが特徴です。
ただし、短時間で手足のしびれや痛みが出現した後に消えた、しびれと同時に手足の力が入りにくいという症状も伴った場合には、一過性脳虚血発作という脳の血流の一時的な悪化が原因の可能性もありますので、急いで病院を受診してください。症状の経過や、脳のMRI検査などから診断します。
2.脊椎が原因の場合
手にしびれや痛みが出るのは、脊椎の中でも主に頚椎の疾患です。
頚椎症性脊髄症、神経根症、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎後縦靭帯骨化症、などです。
痺れを感じる範囲が、障害されている神経の分布に沿った特徴的なパターンを示すことが多いです。
(脊髄神経による痛み、しびれを参照ください)
首を後ろに傾けると(頭を上に向けると)しびれがきつくなる、手を上に挙げていると楽になる、などがあてはまる場合は、頚椎の症状である可能性が高いです。 診断のためには頚椎の画像検査を行いますが、レントゲンだけでなくMRIも必要です。
3.末梢神経が原因の場合
多いのは、手根管症候群、肘部管症候群、胸郭出口症候群、などです。
手根管症候群とは、正中神経が手首(手関節)にある手根管というトンネル内で圧迫された状態です。
夜間寝ている間にしびれが強い、親指から薬指までがしびれるが小指はしびれない、などが特徴です。
(末梢神経による痛み・しびれ を参照下さい)
肘部管症候群とは、肘の内側の部分で、尺骨神経という神経が傷むことで、小指側にしびれがきたり、手の細かい動きが上手にできなくなる病気です。
当初は薬指と小指に痺れが見られ、肘を曲げている姿勢で症状が強くなります。
胸郭出口症候群とは、脳から手に広がる神経は、頸椎から肋骨と鎖骨の間を抜け、脇の下を通って腕に分布しますが、首から脇の下に抜ける部分(胸郭出口といいます)で神経が圧迫され、手のしびれや脱力などの症状が出るのが胸郭出口症候群です。
末梢神経の疾患は、MRIなどの画像検査では診断できません。神経伝導速度検査という、神経に電気を流す検査などを併用して診断します。
しかし、それでも胸郭出口症候群は大変診断が難しく、さまざまな診察所見を確認してから診断いたします。
②足がしびれますが、原因は?
原因としては、手の痺れと同様に、脳の疾患、脊椎の疾患、末梢神経の疾患、内科的疾患、などが挙げられます。他には、血管の病気で足がしびれることもあります。
脊椎が原因の場合
足がしびれるのは、腰の部分で神経が圧迫されている状態が考えられます。
具体的には、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などの可能性があります。
腰の神経の症状である場合も、 痺れを感じる範囲が、障害されている神経の分布に沿った特徴的なパターンを示すことが多いです。
(脊髄神経による痛み、しびれを参照ください)
診断には、頚椎の場合と同じように、レントゲンだけでなくMRI検査も必要です。
血管が原因の場合
閉塞性動脈硬化症という、足の血管に動脈硬化が進んで、足への血流が悪くなる病気が考えられます。一定の距離を歩くと足の裏やふくらはぎなどがしびれる、休むと治まる、という症状が見られます。さらに病状が進むと、じっとしていても足がしびれるようになります。足の血圧と腕の血圧を測定して比べることで診断します。
③手や足のしびれがありますが、病院の何科を受診すればよいでしょうか?
お答えする前に、詳しく症状をお聞きする必要がありますが、
脳神経外科、神経内科、または整形外科であれば、詳しい診察の後に適切な検査を提案できると思われます。
症状を詳しくお聞きすることで、おおよその疾患の見当は付きますが、
一般の方では判断が難しいでしょうから、まずはかかりつけの先生に御相談されるというのも一つの方法です。
検査が必要と判断されれば、CTやMRIなどが可能な病院を受診頂き、詳しく検査を受けるのが良いでしょう。
ただし、画像検査もあくまで参考データにすぎません。
最終的な診断のためには、症状と画像検査の結果が一致するのかを考えなければならず、ある程度の経験が必要になりますので、特に整形外科や脳神経外科を受診される場合には、脊椎疾患を専門にしている医師を受診されることをお勧めします。