手足のしびれ、痛みの原因として、脊髄の神経への圧迫の他に、末梢神経(脊髄から枝分かれした後の神経)が原因になることもあります。
日常的によく見られる神経(圧迫されやすい神経)と、その時の症状について説明します。特に障害されやすい神経を選びました。
下に書いたものと同じような痛み・痺れ・脱力などでお悩みの方は、原因が末梢神経かもしれません。
いくつか当てはまる方は、一度診察を受けられることをお勧めします。
手根管症候群
手首の付け根には、骨と靱帯に囲まれた「手根管」という空間があります。この中には、正中神経という神経と、手の指を曲げる筋肉の腱が通っています。フタのようになっているのが、横手根靱帯という靱帯です。(図:右手首の断面)
手根管症候群とは、この「手根管」という空間の中で、何らかの原因で正中神経が圧迫されることで起こる、正中神経の障害です。
透析をされている方、腫瘍や腫瘤などの出来物などが神経を圧迫する場合もありますが、ほとんどの方は、神経が圧迫されている原因が分かりません。ただし、更年期の女性や、手をよく使う仕事をされている方に多い傾向があります。
(症状)
□ 親指、人差し指、中指と、薬指の半分(親指側)にしびれや痛みが出る。
□ しびれは、手首をぶらぶら振ると治まる。
□ 自転車やバイクを運転する時、眠っている時などに、しびれがきつくなる。
□ 親指のつけねが痩せてくる。
(治療)
まず、しびれをとる薬を内服して頂きます。
効果が不十分な時は、正中神経ブロック(痛みを抑える薬を手根管の中に注射)などの治療を行います。
薬の内服やブロック注射を行っても効果が不十分な場合や、生活に支障が出る場合には、手術を御相談します。
内視鏡下手根管開放術
手術は、横手根靱帯という、手根管のフタのような靱帯(上の図を参照)を切って、正中神経への圧迫を無くす、というものです。
一般的に行われている手術は、手のひらを3cmほど切開してから靱帯を切る方法です。以前から行われており確立された術式ですが、手術の後にキズの痛みが手のひらに残る場合がありました。
当院では、手根管の手術にも内視鏡を導入しています。
エコーで神経や靱帯を確認しながら、正中神経の横へ挿入した内視鏡で確認しつつ、皮膚の下に細いメスを通して靱帯を切る方法です。
キズの大きさは1cmほどです。手術の翌日から、手の細かい作業ができます。手のひらに痛みは殆ど残りません。
梨状筋症候群
図は右のおしりを後ろから見たところです。
大坐骨孔という骨の穴の中を梨状筋が通過しますが、その下に坐骨神経が通っています。梨状筋が緊張したり引き延ばされたりすることで、下にある坐骨神経が圧迫され、坐骨神経の痛みが出る状態を梨状筋症候群と呼びます。
(症状)
□ おしりから太股の後ろ側、外側に強い痛みが出る。
□ 特に座っている時に痛みが強くなる。
MRIなどの画像検査では神経の圧迫が分かりませんので、診断されていない患者様は多いです。
(治療)
エコーガイド下での坐骨神経ブロックを行います。
ブロックをして痛みが楽になった方には、梨状筋のストレッチを指導します。
梨状筋が今後、坐骨神経を圧迫しないように、予防のためです。