頚椎症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどの患者さんは、病院で詳しい検査などを経て診断を受け、多くの場合、鎮痛剤や神経痛の薬を処方されて外来通院されると思います。
医師の指導を受けながら治療が始まるのですが、薬を飲む以外で、脊椎疾患を悪くさせないために、御自身で出来ることがあります。
それは、姿勢の改善、減量、禁煙、です。
①姿勢の改善
脊椎に負担がかかるほど、椎間板や椎間関節などに負荷がかかり、長期的にみると脊椎が変形する方向に力が加わります。
物理的に負荷をかけにくいよう、自分自身で姿勢を心がけることで、変形の進行をある程度抑えられます。
どのような姿勢が脊椎への負荷を減らすのか?というと、
簡単には、「見た目に良い姿勢」が、脊椎への負荷をかけにくい姿勢です。
具体的には、立った姿勢では、耳、肩、大腿骨の頭(大転子 ふとももの付け根の外側の出っ張り)、膝関節の前方、くるぶしのやや前方、が一直線に並んだ状態が、正しい姿勢です。
より簡単に姿勢を意識する方法としては、壁に背中を持たれかけて立ってみる、というやり方があります。
そこで、後頭部・背中・お尻・かかとが壁につく、そして背中と壁の間に⼿の平くらいのスペースができる、のが正しい姿勢です。
日に何回か、壁に背中を付けた姿勢で立ってみて姿勢を確認することで、少しでもいい姿勢に近づくための方法の一つです。
② 減量
肥満と背骨の病気の関係について、数々の論文が報告されています。
(参考文献:Effect of Obesity on the Development, Management, and Outcomes of Spinal Disorders. JainらJ Am Acad Orthop Surg . 2019)
体重が重い、それだけで、脊椎にかかる負荷が大きくなります。
すると、退行性変性、つまり年齢や慢性的な負荷による椎間板や椎間関節、椎体などに生じる変形は、より進行します。
椎間板への負担も大きくなり、椎間板ヘルニアが発症しやすい状況になります。
さらに、肥満によって筋肉量が減るので、脊椎を支えている筋肉の量も減少し、脊椎の支持性にも影響が出ます。
脊椎には、生理的に安定する、全体に負担がかかりにくい配列(骨同士の重なり方)というものがあります。
頚椎が(横から見て)前向き、胸椎が後ろ向き、腰椎が前向きのカーブをゆるく描くように重なっているのが、安定した配列です。
筋肉が減少することで、この配列も変化します。
たとえば腰椎で前弯が減少し、まっすぐから後ろ向きの重なりになりやすいのです。
すると、腰椎に負荷がかかりやすくなります。
さらに、肥満によって、内臓の脂肪細胞が増えます。
その増えた脂肪細胞から、炎症をおこす物質が出されて、慢性の小さな炎症がからだのあちこちで起きるといわれています。
その炎症は、心血管の病気や動脈硬化、がんや骨粗鬆症などにも影響するものなのですが、
最近の研究で分かってきたのは、脊椎でも同じような炎症が生じるということです。
その炎症により、先ほど書いた脊椎の変性が進みます。
少し難しい話になりましたが、要するに肥満は、様々な形で脊椎に悪い影響を及ぼします。
ですから、肥満の方は、できるだけ体重を減らすことが、背骨の病気を悪くしないためにも大事なのです。
③ 禁煙
喫煙と背骨の病気の関係についても、数々の論文が報告されています。
(Spinal health and smoking. Harrerら South Dakota Medicine 2009)
タバコは心臓や血管に作用しますので、椎体への血液の流れが悪くなります。
椎間板には血液は流れないのですが、となりの椎体から栄養分が拡散されて維持されています。
タバコによって、この拡散が減少するので、椎間板への栄養分の透過も減少します。
つまり、タバコを吸うことで、椎体や椎間板の変形が進行します。
また、骨は作られては破壊される、という代謝サイクルを繰り返していますが、
喫煙は骨の代謝にも悪い影響を与え、骨粗鬆症のリスクにもなります。
さらに、喫煙患者では、痛みに対して敏感になりやすい、腰痛や下肢痛を感じやすい、と報告されています。
脊椎疾患と診断されている方で、タバコを吸われている方は、
病気を進行させない、症状を悪くしないためにも、できるだけタバコを減らす、出来れば禁煙するのが望ましいでしょう。
まとめ
脊椎疾患の患者さんが日常生活で気を付けるべき3つのこと、を書きました。
脊椎疾患の治療は、内服などで始まることが多いですが、飲み薬で症状が緩和されていく方もおられる一方で、一部の方は手術が必要になる場合もあります。
治療が始まったら、出来るだけ脊椎に負担をかけない、これ以上悪くしない、という意識を持つことがとても大事です。
せぼねの病気は何か所も発生することがありますので、別の部位の病変を発症させない、という意味合いもあります。
今後は、せぼねにも優しい生活、を心がけてください。